
国際交流の効果の具現であるのに、その成果を評価していない」とか、「毎日の活動の積みかさねが本当の国際交流、国際理解である」といった意見に代表されるように、特に国際交流という活動の特性を考えると、イベントのみに対する支援だけでは不十分であるというのが実状であろう。すなわち行政は「何をやったのか、どのようなイベントをやるのか」を問い、日常の活動の中から生まれる国際理解や社会還元を評価しない傾向にあるといえる。それは国際的な友好や友情関係の構築というきわめて初歩的な国際交流の目的にたいする支援にとどまっていることを示唆する。21世紀を目前にした国際社会における日本の社会経済環境の変化とその実態を考慮すれば、必然的に行政は国際交流活動を行う市民セクターへの支援にかんして、新たなる評価軸の設定を迫られるであろう。 5. おわりに
以上、市民セクターの組織管理について、その管理要素としての人的資源、資金、サービス、情報のそれぞれの側面について議論を展開した。そして事例研究として、国際交流活動を行う市民セクターを取り上げ、ヒアリング調査の結果を紹介しながら、若干の考察を試みた。さらに、それらをふまえ、本研究の主題である「市民セクターと行政との連携」について概説した。最後に組織管理の4つの側面という論点に立ち返り、特に強調したい項目についての簡単な考察と、今後の市民セクターの課題、将来像について触れておきたい。 市民セクターは当然、まず出発点において人材(ボランティアを基本原則とした)を確保する必要がある。すなわち“この指にとまる”ヒトを集めることから始まるのである。いまや日本の社会構造はますます複雑化し、国民の労働提供先が多様化し、選択肢が拡がると、ボランタリーに働く(仕事をする)ことにたいする潜在的な需要は高まる、しかし緊急災害ボランティアや福祉ボランティアのような活動の方がより脚光を浴び、地道なボランティア活動にたいする理解は少ないように思われる。特に「自己主張世代」と呼ばれる若い人々は、メディアに映し出される活動の一部を「かっこいい」「やりがいがありそうだ」と美化して捉え、「やってみたい」「役立ちたい」と簡単に思う傾向にある。大変結構なことである。しかし実際には、何が真のボランタリー精神であるか分からぬまま、現場の厳しいボランタリズムと描いていたイメージとの乖離に気づき、なかなか定着しないのが実状である。市民セクターはそうした世代を惹きつける組織的自己改革努力と、行
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